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猫好きエンジニアのブログ

Yahoo! JAPAN Tech Conference 2019に参加しました

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1/26(土)に開催されたYahoo! JAPAN Tech Conference 2019に参加してきたので,聞いたセッションについて簡単にメモします.

イベント概要

全体

  • 今回始めてYahoo! JAPAN Tech Conferenceに参加したが,普段聞けないYahooの取り組みや中の人の話が聞けてとても良いイベントだった
  • やはり大企業だけあって,社内の体制やプロセスが合理的でしっかりしていて,スタートアップ系企業の発表では味わえない"強さ"のようなものを感じた
  • 会場の場所がちょっとわかりにくかったけど,六本木駅から来くるとスタバの横の階段を降りて地下1Fに行き,しばらく真っ直ぐ歩くとミッドタウンホールの入り口があった
  • 予定があったので17時以降のセッションは聞けなかった😢

セッション

13:00-13:45 Keynote

藤門 千明さん(執行役員、CTO)

  • Yahooのねらいはインターネットでユーザがよりアクションすること
    • スライドの表現から,Search/Know/Buy/Payに特に主眼をおいているように感じた
    • キーノートの最後に流された動画でも,購入や支払いのイメージが強かった
  • Data/AIに関する取り組みはそれこそ10年前からやっているが,コンピューティングリソースが足りない点が弱点だったので,kukaiというスーパコンピュータを構築した
    • kukaiは水冷で,環境への配慮やエネルギー効率を考慮している
    • エネルギー効率(GFlops/watts)を上昇させるためのパフォーマンスチューニング自体をMLで行っている
  • kukaiの適用例
    • ヤフオクの不正出品の検出
    • 知恵袋のネガティブポストのレーティング
    • いづれも,モデルの作成が以前に比べ数百分の一くらいの時間でできるようになった
  • Yahooともなるとそのデータ量は膨大になる中,自社でAIへのアプローチを工夫しているのが印象的だった

仲原 英之さん(執行役員、CISO)

  • セキュリティへの取り組みの話
  • 2018の全サービスTLS1.2移行
    • 事前調査で非TLS1.2の通信は3%だった(母数多いから数は多い)が,売上より安全を優先して全サービスTLS1.2に踏み切った
    • 事前の告知や移行サポートにより9月には1.3%までに減った
  • 今年はOpenSSL1.0.2がEOLになるので,OpenSSL1.1移行が大きな動きになる
  • OSSの安全な活用とCI/CDの重要性が学びだった
    • ビルドパイルプラインに脆弱性検出を入れてる
    • DevOpsからDevSecOpsへ
  • YahooのTLS1.2完全移行は話題になったけど,他の企業からすると,「Yahooがやってるんだからうちもいいよね」と言いやすく,すごい助かった印象(実際IEを切る口実に使ったりした)
  • ユーザ数が多い中,決断は難しかっただろうけど,英断だったと思う

14:00-14:45 B-1

パスワードレス普及への取り組み by 三原 一樹さん

  • Yahoo IDの数は2018年9月時点で4,587万
  • これまではパスワードの安全性を高めるためにログイン履歴・ログインアラート・MFA・スマートログイン(ソフバンユーザ向け)などを対応してきた
  • 自アンケートによるとパスワード忘れ(96%),使い回し(73%)などパスワードがあること自体による問題が浮き彫りになった
  • そこでSMSを使った解決策を提供してきたが,これも十分とは言えなかった
  • そこでFIDOを使って,生体認証によるセキュリティとユーザビリティの両立を図っている
    • サーバは認証情報を保持しない
    • FIDO2でブラウザでも使えるようになる
    • FIDO認証採用はYahoo! JAPANが世界初
    • 現在はAndroidのみ
  • SMSはWhat you haveに近い認証だと思うので,パスワードよりユーザビリティは上がるが安全性は下がりそうな印象があったので,FIDOを使うのは良いなと感じた
  • TLS1.2の例と同様に,「Yahooがやってるから」と説得しやすい例を先行して確立してくれるのは,すごいありがたいと感じた

ヤフーのデータ戦略を支えるID連携 by 本間 洋光さん

  • Yahoo IDをベースにデータの提供,蓄積,活用するために同じIDでサービス利用してもらう工夫
    • ユーザにカスタマイズされたコンテンツ
    • ログインの簡便化(セッションの引き継ぎ)
    • ブラウザでのログイン情報をアプリに引き継ぐ
  • YahooID連携
    • OpenID Connectに準拠している
    • クロネコメンバーズの例
      • 再配達率15%を低減するためにYahooアプリで配送状況を確認しやすくするなどのシナジーを創出
      • プッシュ通知やY!カレンダーへの配送予定など
      • Yahoo IDをキーにクロネコメンバーズサービスからWebAPIへ配送状況を送信し,PulsarでYahoo各サービスへ配信している
  • 単に認証基盤を提供するだけではなく,他のサービスとシナジーを創出する取り組みをしている点が印象的だった

15:00-15:45 A-2

ライブクイズ「ワイキュー」を生み出した"内因的モチベーションドリブン" by 善積 正伍さん

  • 会社にとってのサービスの目的や理由が,チームメンバのモチベーションの理由になるかというとそうでもないので,内因的動機づけの必要性にアプローチした話
  • 課題解決型のサービスは課題と解決策が紐ついて明文化しやすいし共感は得やすいが,新価値想像型のサービスは課題に相当するものは無い
    • リーンキャバスが描けないので,MLP(Minimum Lovable Product)で仮説検証した
  • 1st MLPはSlack Botのアンケート機能でMLPを作って,賞金をかけたイベントが盛り上がるのかどうかの検証をやった(開発ほぼゼロ)
    • 小さな成功体験が発生し,メンバの内因的モチベーションをドライブさせた
    • 「みんなでワイワイする」というUVPが生まれた
  • 2nd MLP
    • 1st MLPのモーメントが実際のUIでできるか検証した→成功
    • 技術的なパフォーマンス実現に難しさ(25億PVレベル)があり,リリース見直しがあり,ライフチャートは低減した
  • 成功体験の因数分解によるモチベーションの維持もPMの仕事
    • やらなくてもわかること,やらないとわからないことは事前に分解してMLPを組み立てる
  • MLPは仮説検証でありチーム育成でもある
    • どうメンバのモチベーションが上がるかを含めて設計する
    • 大企業は多くの人が関わるからこそ,誰のモチベーションをくすぐるかまで設計する
    • 仮説検証 x MLP x チーム育成
  • リーンキャンバス描けない問題や検証のスパンが長かったり成功体験が無かったりすることによるモチベーションの低下は自分の組織でも経験があるので,非常に参考になったし同意できた

ワイキューが目指した"楽しい時間を作るデザイン" by 染矢 沙織さん

  • 「惰性的な日常にドキドキする瞬間を」→パーティをコンセプトに据えた
  • パーティ会場の擬似的な再現
  • UIは単純にYahooのガイドラインに単に従うのではなく,サービスの特性やコンセプトに準じて決めていった
  • スライドのデザインもちゃんとワイキューのデザインを適用しているっぽいくて流石感あった

16:00-16:20 B-3 ライブ動画配信サービス「ワイキュー」の作り方 〜優れた社内技術で実現する、少人数のサービス開発〜 by 石井 直矢さん

  • Yahooのトップページは昔はYUI(米Yahooのライブラリ)だったが,Reactに変更された
  • Yahoo社内に動画,コンピューティング,DB,NGワード等の各プラットフォームチームがあるので,サービスのコアバリューに集中でき,すばやく開発ができる(ワイキューのメンバは3人で,開発からリリースまで6ヶ月ほどだった)
  • 配信動画はHLS(HTTP Live Streaming)というフォーマットで,動画にメタ情報が付加でき,フロントエンドでメタデータを取り出して処理している
  • Yahoo全社として役割分担とフォーカスするべきものが確立されているので,それぞれが無駄なことをせずにモチベーションを保ちながらサービス開発できている感覚が垣間見れて良いなあと感じた

16:25-16:45 A-4 LEAN XPを活用したユーザーの声を聞くものづくり 〜Yahoo! JAPAN タブレットアプリのリニューアル〜 by 馬場 敬寛さん

  • リソース不足と技術のレガシー化の問題を抱えながら,LEAN XPを活用してゴールを達成していった話
  • LEAL XP
    • Pivotal Labsで学んだ
    • LEAN+UCD+XP
    • チームとしてはPM+Designer+Developer
  • 以下の3つのステップからなるデザインプロセスを実施した
    • STEP1: ターゲットユーザの理解(Generative Research)
    • STEP2: 課題の解決策の探索(Evaluative Research)
    • STEP3: 解決策をより使いやすくする方法の探索(Usability Research)
  • 自分の組織でもペルソナやシナリオをデザインすることはあるけど,それを検証してアップデートするというサイクルがうまく回っていないことがあるので,具体的なプロセスの説明をしてもらって参考になった